市場の中の芸術

突然ですが…。

何かをつくる人にとって"一番大切なこと"って何でしょうね。

私は美術に携わる(所謂、つくる側の)人間でありたいので、自分の中でもこれは結構考えどころだと思っています。

今日の講義中、大学の先生から興味深い話を聞きました。ヨーロッパでは、作家のイメージをつくるのも芸術活動の一部だと。むしろヨーロッパでは作品より作家のイメージの方が重視されるようです。固有名、ブランドなどがその代表ですが、固有名がもつ記号としての強さには時々恐ろしさを感じる時があります。作品が素晴らしくて売れているのか、作家が有名だから売れているのか…わからないものも沢山あります。

そう考えてると、余計にわからなくなるときがあるんです。この曖昧な答えのない世界にひどく怯えることがある。逃げ出したくて、逃げようとして、でも戻ってきてしまうのは、やっぱり作ることが好きだからだと。

最近、"どうして作るのか"と、よく聞かれます。教授たちに、"なんであなたはつくるのか"と。それは、私の人生観を聞かれているようで、またそれにも怯えるのですが…笑。私はきっと、つくることをやめられないのだと思います。どういう形であれ、どのような方法であれ、作品を作ることは私が社会と繋がる一つの手段であるから。将来、作家活動をしたいというわけでなく、何かしらつくる人間でありたいと、、そう思います。

講義の話に戻りますが、先生はこうも仰っていました。買う、売るという市場の中の芸術も嫌わないでください。ものづくりにはコストがかかります。ものがつくれるのは、それを買ってくれる誰かがいるからです。と。

日本で美術をやっていると(デザインはともかく)、商業的な考えはタブーとされる風潮があります。芸術家たる者、自分を表現できる人であれ、的な笑 その考えも勿論大切だと思います。表現できないのなら作る意味がないし、自分がそこにだせないのなら誰も見てくれないでしょうから。でも、誰かを思って作るというのも、同じように大切なのではないでしょうか。自分はこう思う、あなたはこれを見てどう思う?その問いかけができる作品は、唯一無二の自分と他者を繋げる作品になれると思うのです。

ヨーロッパで重視されている作家のイメージも、人と人との繋がりを大事にしていることの表れなのかも知れません。そう考えると少し気が楽なので私はそう考えることにします笑。

 

芸術に関わる人、ものをつくる人間にとって大切なことは人それぞれなのでしょう。自分が表現したいものを認めもらいたくてつくる人、つくるという行為が純粋に好きな人、人と繋がりたくてつくる人、義務感に駆られてつくる人… ものをつくるには、つくろうとする人の数だけ つくる理由があって、それを見つけるのはすごく大変で、でもすごく楽しいことであること。多分これからも悩み続けるだろうけど、頑張って向き合っていこうと思えた1日でした。